「ねー、男の人ってオナニーにテッシュ何枚使うの?」
 中学高校時代はずっと女子校だったので、同世代の男子と話す機会が全くなかった。(そして恐ろしい事に、バンドの追っかけをしていた私が中学&高校時代にちょこっと話していた親兄弟以外の男の人たちは、ラルクのスタッフさんやメンバー様だった…)と言う特殊な環境だったもんで、ずっとずっと気になっていたのだ。

 明らかに目の前で引きつり能面のような顔で固まっているのは、出会って数日の新しいクラスメイトたち。
 オイオイ、自分たちから「ふかみちゃん、6年間女子校だったんだって? へー、男に免疫ないんだ。俺達になんでも聞いてよ」って言ったくせに。何固まってるんだよ!根性ねぇな!(怒)

 とにかく早く答えを聞きたいと、あたしは言葉を矢継ぎ早に続けた。
「私が読んでいた本によると若い男の子は一晩でテッシュをひと箱使うってあったよ。エッチも一晩で6回。シーツがドロドロだってあった」
「え…ひと箱?ろ、6回!?」
「ば…ばかッ!ありえないって!」
「だよな! だよな!! 俺がおかしいんじゃないよな!?」
「つーかお前さ、一体なんの本読んでるんだよ!? こえーよ!
 
 何だかちょっとお兄さんぶって目の前に座っていた奴等が、突然オリから放たれたサルのようにギャーギャー騒ぎだす。

 エロトークって一瞬にして仲が決別するか、ググッと仲良くなるか白黒ハッキリするところがいいなと幼い私は新発見をしたものだ。
「うっさいな〜。いいじゃん。さっさと教えてよ」
 こっちもさっきまで丁寧語だったくせに、強気になってタメ口をはたく。
 ざっと私をハブにして、コソコソと秘密会議を始めるオトコの子たち。
 誰かの言葉に大仰なほど体を反らせて反応したり、固い握手なんかを交わしながら激しく盛り上がっている。 
 
 教室の片隅でエロ本に群がる中学生ってこんな感じなのかしら? と色々想像して微笑ましくなった。
 何より専門学校に入って一週間。男の子同士もさっきまでよそよそしかったのに、イッキに仲良くなってるんじゃないか?…などとノンキに観察しつつ、人生初の飲み会(クラスの親睦会?)でゴクゴクとサワーを飲んで返答を待った。(この頃はまだ自分の酒量がわからずサワーだったわ…)。

「先生!答えが出ました!」
 勇気のある代表が思いきって手を上げる。
「はい!里中君!」
「平均3枚から6枚です」

 里中君の答えに、誇らし気に頷く残りの数名。
「はいはい!平均ってどーゆー事でしょうか?」
 別の奴がパっと手をあげる。
「溜まってる時と溜まってない時の違いであります!」
 ギャハハと言う笑い声や、「よく言った!」と歓声が上がる。
「では。平均3〜6枚で間違いありませんね」
「はい。だいたいそんなもんです」


 …てな具合でふかみ教授のレポートが出来上がった。

 成人男子が一回のオナニーで使うテッシュの量は平均3枚〜6枚。溜まっている時といない時で異なる。

 この時から私の未知なる探究の旅が始まったのでございます。

 そして男の子のひとりHについての研究論は更なる調査の結果、俺流・オナニーの仕方だの、AVを見つつ抜く方法などを解明し、飛躍的な広がりを見せ発展していくのだった。(笑)

 そして探究を続けていくと腹を割って話せる男友達はできても、彼氏はできないと言う衝撃の事実を知ったのはもう少し先の出来事でございました…。

コメント