『隣人の笑顔を信じられますか?』
みたいなオビに惹かれて手に取った本。

元裁判官・梶間勲の隣に、なんの運命の悪戯か、以前自分が無罪判決を言い渡した武内が引っ越してくる。
彼はひと好きのする知的な笑顔と、その巧みな話術やプレゼントで梶間家の家族の心へ入り込んでくる。
彼が隣に越してきてから起こり始めた不可解な事件たち。
そして崩壊をはじめる家族の絆。
この無気味な事件に彼は関係しているのか…?
みたいなお話です。

ドンデン返し!とかはなかったけど、面白かった!
とにかく読み出したら止まらずイッキに読んでしまったし、
読後感も良かったです。(読後感、コレ大事!)
薄気味悪い感じとか、ホラー色が強い感じが貴志裕介の
『黒い家』っぽい感じかしら?
なんかちょっとありそうな感じで薄ら寒い気持ちになるところとか。

まずタイトルの付け方が上手いなぁと思ったのと、家族(特に女性)の内面を描かれるのが本当に上手。

大筋とはちょっと離れるけど、印象的なシーンはコレ。
梶間勲の寝たきりの母が遺言として、生きている間に皆に遺産を分けるシーンがあるんだけど、そのへんとかすっごく心臓にキました。

たまに来て調子の良い事を言う娘には、いつも「ありがとう」と言い、100万単位の遺産を残したと言うのに、ずっと親身になって付きっきりで世話をしてくれていた勲の妻には最後まで一言の礼もなく、遺産はわずか3万円と言うのは、どーゆー事だ!!(怒)
小説でも、
「そんなものはなくていいのだ。なければ当然勲の配当に含まれると常識的に考えるのだから。なぜわざわざ3万と言う数字を自分に突き付けるのだ」
みたいな事を思うわけですよ。(ごめんなさい。今本が手元にないからちょっといい方違うけど…)。
数年介護した人に対して3万って言う数字を出して、その行為に奥さんが絶望して「いりません」と言うと、娘さんが「額が少ないからってそーゆー事を言って母を傷つけるの?許せない」みたいな事をネチネチ言う訳です。
もー!!!!(怒)
本人に悪気がないのだろーが、それが物凄く嫌らしい! 吐き気がするほどのムカつきを覚えました。
そしてキャラクターに見事に感情移入してしまう私。
こうゆう部分が本当にうまいなぁと思いました。
あと本にあった
狂気は人の『思い』がつくる。
って言葉も印象的です。

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