大奥・『女の戦い』と言えば、「ホホホホ」と笑顔の仮面を被りつつ、腹の中ではエゲツない野望やら見栄やら企みやらがマグマのよーに煮えたぎらせた女達が集まる場所というイメージがございます。

 私にとって結婚披露宴こそがぷち大奥。
 格式やら家やら決まりやら色々あるだけでなく、女たちは、皆にこやかな笑顔と着飾ったおべべ。しかも同じグループの友人の結婚式の場合、オベベは前回と同じ着用をする事はタブーなど、暗黙のしきたりが多い。そしてコレを守らないつもりなら、たとえ友人にでも、影で罵倒される覚悟をせにゃならぬ。
 これこそ女の戦いの場ではありますかいな。

 新参者の頃は良かった。まだ見ぬ世界へと召集された喜びに、花嫁ばりにウキウキと、「ねー、A子は何着てく?」「美容院行っとく?」「どうしよ!泣いちゃう!」と友達と大盛り上がり。当日は新郎新婦が頼んだカメラマンを押し退け、写真小僧のようにフラッシュをたきまくり、手がちぎれるほどに振る姿は、きっと、「ここは普段の場所とは違うのよ!」「場所考えなさい!」「最近の若い子は…」とか、名前も知らぬどこかしらの局達に、眉をひそめられたのだろうが、若い本人達はお構い無し。

 でも現在20代も後半を迎え、新参者から局へと、順調に階段を昇っている。

 さー、こっからは同世代が凄いわよ〜。ドロドロしてますわ。

 私は呼ばれなかったんで、その披露宴に出席した友達に「どうだった?」と聞くと、彼女たちは、「花嫁綺麗だった」「幸せそう」だけでなく、その後に必ずと言っていい程、血も涙もない冷徹な学者のように独自の分析結果を報告するのです。

「料理はB子の時の方が美味しかったね」
「すごい式だったよ。アイツそんなに貯金あったっけ? 親か。やっぱ」
「男は不作だった」
「すごい旦那が素敵だった。いいの捕まえたよねぇ(心から喜んでいるが、若干のヒガミあり)」
「Gの奴が凄い服着てくるからびっくりした。ありゃねーだろ」
「はー…なんで呼ばれたんだろ。今金ないから正直キツかったよ」
「会場にいた旦那の同僚たち。何人かがアナ兄弟だったらしいよ。彼女遊んでたもん」

 もうピーコの辛口ファッションチェックのような、鋭くデリカシーのない指摘がビシバシ。

 あ、誤解をされないように言うんですが、みんな友達の結婚を本当に心から祝福しているんです。
 式の間は友達の幸せそうな笑顔や、「汝、病める時も健やかなる時も…」という神父の台詞に、「誓います」と告げる友人に思わず涙。手が真っ赤になるほどの力強い拍手と「おめでとう!」を送るのですが、式が終わり披露宴が近付くと喜びの中にも冷静な調査員のような仮面をポケットに隠し持つわけです。

 披露宴が始まる前。座席やフロアでの井戸端会議もヒートアップ。

「わー、ふかみちゃん久しぶり。最近どう? もーウチのグループも半分お嫁に行っちゃったね」
「そうだね。早いね」

 頷く私に、
「ねぇ、ふかみちゃんは彼氏いるの? 結婚の予定は??」
 と鋭く聞かれる訳ですよ。これっていわゆる内偵ですよね。
「あー、私ないわ」
「そっか、良かった。(何が良かったんじゃ!)私もなんだ。でもDとか来年あたりって噂だよ」
「ふーん(いまのところあまり結婚に興味がない)」

 あまり関心をしめさない私にの肩を別の友人がポン叩き、
「みんな大丈夫! ウチには負け犬・総大将がいるから! ね、ふかみ大将」
「ああ? 何よ、負け犬・総大将って。縁起悪いからやめてよ!」

 と言うが、「そうだ。ふかみがいるから私がビリではないだろう」と、言うように皆が、「大将! 大将!」なんて言ってやがる。
 今の私だったら、笑い飛ばせるんだけど、そん時はちょっぴり微妙なお年頃だったので、ムカっとしたもんだ。
そしてついでに、
「ふかみちゃん最近誰と連絡取ってる? EとかFとかは?」

と他の同級生たちが、どの程度の幸せにいるかをチェックするために聞かれたりもある。

 ああ、おそろしい。大奥。
 女の欲と見栄が火花を散らすマスカレード。
 もし私が結婚しても披露宴やめとこうかなぁ…と思う今日この頃です。
 それかもしやるなら、入場資格は瓶イッキしてベロベロになった人のみ!とかがいいな。モチロン、花嫁&花婿も瓶イッキ。 なんか無礼講って感じがして良いと思いません?

★今回の『大奥・女の戦い』は、お題を考えてくださったyukiさんに捧げます! ありがとうございました!

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