「ふかみん。美味しいカツ丼あるぞー」
 家に帰るなり父親がそう言ってくる。

 カツ丼は好きだ。大好きだ!
 大好きだけど、深夜も1時をまわってしまうとさすがに重い…。
 今日は食べないと言うと、「せっかく買ってきたのに!」物凄い剣幕で怒りだすので、半分だけ食べて「残りは明日」と言った。
 よかれと思って買ってきてくれるのは嬉しいけど、ちょっと勘弁願いたい…。

 逃げるように母親の部屋にお茶を持って向かった。
 今、母親がインフルエンザにかかってしまいダウンしているのだ。
 本当はもうちょっと看病したいんだけど、現在監禁中(会社に…)なんで、ままならない。
「大丈夫? ご飯食べた?? お茶入れたよ」
 私の問いかけに少女のように首を横にふる母親。
 オイオイ…。なんだか一回り小さくなったぞ…。
「ほらお茶飲んで。あと果物。ちゃんとご飯食べた?」
「お父さんがカツ丼買ってきて…。お茶はコンビニで買ってきたの……」

 シクシク泣き出す母親を見て、カーっと頭に血がのぼる。

 ガンガンと音をたてて階段をおりると、父親に
「熱が40度近くある人がカツ丼なんか食うか!!!!」
と怒鳴った。
 ションボリとうなだれた父は居心地が悪くなったのか、そそくさと犬を連れて散歩に出かける。
 翌日。私が婦人科から食材を買って帰ると、両親はそろってダイニングにいた。
「お粥食べる? それともうどんとか作ろうか」
 私の問いかけに、父親が、
「お母さんは、今お腹すいてないって。お父さん、お母さんにご飯買ってきたんだけど、今いらないって言ってたぞ」
 力なく笑う母親の目の前に置かれているのは『カツサンド』。

 …………。
 もう怒る気力がなくなりました。

 だから、病人はカツサンドもカツ丼も食べないんだってば!!!

 そう言えば私がまだ小学生の頃、病気になった母に父がおじやを作った事が一回あった事を思い出した。
 そのおじやとはラーメンのつゆにご飯を入れただけのものでした……。それを見て母親がショックを受けて「こんなのいらない」と言って喧嘩していたのを思い出しました。

 全く。
 男の人って頼りになんない!!(怒)

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