「最近、平積みするとあっと言う間になくなっちゃうんですよ。これってそんなに面白いんですか?」
と本屋の店員さんに言われた。
 私はこれ以上ないってくらいに大きく頷き、「面白いです!!」と答えた。それがこの『虚貌』です。

<あらすじ> 
 21年前。運送会社を経営する一家4人を襲った凄惨な殺人事件が起きた。
 社長夫妻は残殺され、姉は下半身附随、弟は顔に大きなヤケドを負うという、悪意に満ちた凄惨な放火殺人事件だった。
 この事件で、共犯者に騙され主犯に祭り上げられた荒が出所した事をきっかけに、終わったと思われた事件は再び動きだした。
 荒の出所後、恨みを晴らすかのごとく残殺されていくかつての共犯者達。犯人は本当に荒なのか? 闇の中で蠢く犯人を、末期癌の老年刑事が最後の事件として追いかける……。
 てな感じのお話です。

<感想>
 前の『火の粉』でも書いたんですが、本当に雫井さんは、人間を書くのが上手! 各登場人物の心理描写とか、葛藤とか、別の登場人物との絡みなど(相手によって見せる顔が違うのも良い!)から、登場人物に厚みが出て、誰もかれも本当に存在する人間のように思えてきます。彼らの細やかな感情の動きが、ストーリーをさらに面白くする究極のスパイスなんだと思います。もう、最後まで活字から目が離せません!
 ただトリックとかはちょっと……ってところがあるので、(それを差し引いても全然良いけど!!)、トリック重視で本を選ばれる方にはオススメしません。 (笑)
宮部みゆきさんの『理由』『模倣犯』とか、天道新太さんの『家族狩り』とか、貫井徳朗さんの『慟哭』とか好きな方は結構ハマるんじゃないかと思いました。

エンターテイメントとして見ると文句なしに面白いです。これも映像で観たら面白いだろうなぁ…。と、こっそり頭の中で役者をたてて映像化を試みる私でした。

オマケ:『虚貌』は上下巻なので、ちょっとためらう方は一冊完結の『火の粉』がオススメ。こちらが好きなら絶対好きだと思います。

★☆★雫井 脩介 幻冬舎 2003/04 ¥600(文庫版)★☆★

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