びっくりした。
 ふと視線を上げたらなぜ目の前が『上野』なんだ。
 ぷしゅーっと無情にも電車のドアは閉まり、何事まなかったかのように加速する。
 品川駅で本を開いてから、一瞬の跳躍。
 時計が私の知らないところでグインとはや回しされたような、狐につままれたような…。
 そう。プチ浦島太郎にでもなったような感覚に陥る。

 私はたまにこのワープをやってしまう。
「21時。新宿集合」
とメールをもらい、休日出勤の後に新宿へ向かった私は、
「21時半には着く」
と返して本を読み出した。気がついたのは中野。
「ごめん。本に夢中で気がついたら今中野…。引き返す」
とメールを返してまた本に視線を戻す。
 ……。
「次はお茶の水〜」
 と入った放送に青ざめ、ブルブル震えながら
「すみません…。戻りすぎてしまいました。新宿へ必ず行きます」
 とメールをすると、
「今何時だと思ってるんだ! 新宿着くまで本を開くな!(怒)」
 なーんて怒られた事も先日の出来事。

 本以外にもお酒を沢山飲んで、気が着いたら石川町なんて事もあった。
 電車の中以外でも、夜寝る前にさわりだけ読むつもりで本のページをめくり、気が着いたら朝起きる1時間前とかもあるけれど…。
 全く外部の音とか時間とか全てを遮断して『本』の世界にドップリ浸かってのはカナリ気持ち良い。
 20册読んで1册くらいなんで、そういった本に会うとラッキーって思う。
 その分、現実の世界に戻ってきた時にカナリびっくりしちゃうだけどね。

 あ、もうひとつ。
 ワープする事がございました。それは現在……。
 雑誌入稿直前はガーっとパソコンに向かって記事を作り、はっと顔を上げると時計の針が4回くらいまわって呆然としたりする。
「ちょっと…、さっき2時だったよね…。どうして8時過ぎてるのよ…」
 同僚と泣きそうな顔で弱々しく笑いあう。(つーか笑うしかない…)。

 浦島君も竜宮城から戻ってきた時、こんな感じなのかな〜と浦島君を身近に感じる私でした。
 さて。太郎は仕事に戻ります…。くすん…。

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